2017年1月30日月曜日

「増山たづ子と東北の記録者たち」福島編


増山たづ子と東北の記録者たち


 本展は2013年にIZU PHOTO MUSEUMで開催された展覧会「増山たづ子 すべて写真になる日まで」を再構成し、東北の記録者による写真や資料とあわせて紹介するものです。

 ダム建設により故郷が奪われていくかたわらで村の姿を記録し続けた増山に、震災により失われた土地の文化や故郷の記録に向き合い続けている東北の記録者たちが応答します。


|会 期|2017年2月5日(日)− 2017年 2月26日(日)
|時 間|11:00 − 18:00
|入場料|無料(イベントは有料です)
|会 場|ギャラリー・オフグリッド(福島市荒町4-7 県庁南再エネビル2F、3F)
|アクセス|JR福島駅より徒歩15分。福島県庁南の天神橋手前。

展覧会参加者

増山たづ子、小岩 勉、岩崎孝正、相馬高校放送局、榎本千賀子、赤城修司、林 剛平、酒井 耕、濱口竜介




















増山たづ子

 増山たづ子は、生地である岐阜県徳山村で農業や民宿を営みながら暮らしていました。

 しかし、1957年、同地にダム計画が持ち上がり、1977年に本格化したことを受け、「カメラばあちゃん」として村の写真を29年間にわたり撮り続けました。

 在りし日の徳山村を伝えるこの写真と増山により記された言葉の数々は、高度経済成長の影で奪われていったものに光をあて、私たちの前にもう一度差し出してくれます。それらは震災以前から既にあった東北という土地がかかえる課題をも照らしています。


本展は二つの部屋からなる展覧会です。

 一部屋目では、2013年にIZU PHOTO MUSEUMで開催された展覧会「すべて写真になる日まで」を同館研究員の小原真史が再構成し展示します。

 また、二部屋目では震災で失われた土地の文化や故郷を記録し続ける東北の記録者たちの活動を紹介します。現在も進行中の彼/彼女らの記録活動を、増山たづ子の展示に併置することで、増山の“奪われるものを記録する”という態度をよりアクチュアルに受け取る場にしたいと思います。




















展覧会参加者 紹介


増山たづ子(ますやま たづこ)


1917年岐阜県徳山村(現・揖斐川町)戸入生まれ。1957年に徳山ダム計画が立ち上がり、1973年にその基本計画が決定。この頃から村の生活音などの録音を始める。1977年に徳山ダム計画が本格化し、ピッカリコニカで写真を撮り始める。年金のほとんどを写真につぎ込みながら1987年の廃村後も通い、2006年に88歳でなくなるまで消えゆく故郷をとり続け、あとには約10万カットのネガと600冊のアルバムが残された。1984年にエイボン功績賞、2014年に第30回東川賞飛彈野数右衛門賞を受賞。











『女川海物語』(1992年)より



小岩 勉(こいわ つとむ)


1962年岩手県生まれ。写真家。労働運動などを撮影後、原発のある女川を長期取材。また、街と生活を写真で記録・出版するワークショップを、本吉町(現、気仙沼市)で11年、仙台で5年続ける。写真集に『女川海物語』、『野守の鏡』など。現在、細倉鉱山の写真を撮り続けた、寺崎英子写真集の刊行を準備中。









『自然と兆候/4つの詩から』(2015年)より
岩崎孝正(いわさき たかまさ)


1985年福島県相馬市生まれ。映像作家。中編ドキュメンタリー映画「自然と兆候/4つの詩から」が山形国際ドキュメンタリー映画祭2015 Cinema With Us、ドイツNippon Connection、ポーランドEco Expanded City、モナコ国際映画祭2016 (演出賞&社会貢献賞受賞)で展示、上映。







『ちゃんと伝える』(2014年)より
相馬高校放送局(そうまこうこうほうそうきょく)


震災直後から高校生の視点で震災を伝える活動を続けています。東京新聞や朝日新聞オピニオン欄などで大きく取り上げられ、2013年には高校生として初めて日本ジャーナリスト会議特別賞を受賞。福島におけるコンテストのみ評価は低いが、マスメディアでは取り上げられない高校生の声を聞くことができると、国内はもとより国外でも高い評価を受けている。





建前の祝いで餅撒きを待つ人々 金山町大志 2016年6月25日



榎本千賀子(えのもと ちかこ)


1981年埼玉県生まれ。写真家・新潟大学地域映像アーカイブ研究員。2010年より、地域や学校など各社会集団内における実践を通して、人と写真の関係を捉え直すべく活動する。2016年春、福島県大沼郡金山町に転居。同地域に残る写真の調査・活用に取り組みつつ、町の現在を撮影している。







『トホホ育児日記』(2005-2008年)
赤城修司(あかぎ しゅうじ)


1967年福島県生まれ。高等学校美術教員。1989年、筑波大学芸術専門学群洋画コース卒業。青年海外協力隊員として1994年より2年間ブルガリアに滞在して美術教師として活動。 出品展覧会に、「未来の体温 after AZUMAYA」(山本現代、アラタニウラノ、2013年)、「Transmission」(畠山直哉との二人展、スタジオ35分、2014年)等。







『5年後の飯舘村調査』(2016年)より
林 剛平(はやし ごうへい)/歓藍社


大学で放射線の研究を行う傍ら、東北各地に赴き、その景色や食文化、手仕事の記録を続ける。津波、地震、原発事故によってもたらされたものを地元の方がどううけとめるのか、うけとめているのかにも心を向ける。福島県大玉村で藍の栽培・染色を通じ震災後の里山風景づくりを探求・実践する歓藍社メンバー。2016年より3がつ11にちをわすれないためにセンターに参加。





『なみのこえ 新地町』(2013年)より
酒井 耕(さかい こう)


1979年長野県生まれ。映画監督。2011年東日本大震災後、濱口竜介と共同で東北記録映画三部作『なみのおと』『なみのこえ』『うたうひと』を監督。その後も仙台で民話の記録活動を続けるほか、地域の映像アーカイブ活動に関わる。2015年より一般社団法人NOOKを立ち上げ、「ドキュメンテーション」の実践をメンバーとともに行っている。




濱口竜介(はまぐち りゅうすけ)

1978年神奈川県生まれ。映画監督。2011年東日本大震災後、酒井耕と共同で東北記録映画三部作『なみのおと』『なみのこえ』『うたうひと』を監督。近年の主な監督作品に『不気味なものの肌に触れる』(2013年)、『ハッピーアワー』(2015年)などがある。現在は、文化庁新進芸術家海外研修制度でボストンに滞在中。





※関連企画の参加費は500円です。
2月5日(日)16:30-17:30
オープニングトーク
本展で「増山たづ子 すべて写真になる日まで」の再構成を担当した小原真史(IZU PHOTO MUSEUM 研究員)を迎え、本展を紐解きます。

小原 真史(こはら まさし)
1978年愛知県生まれ。キュレーター、映像作家。IZU PHOTO MUSEUM研究員として「荒木経惟写真集展 アラーキー」「宮崎学 自然の鉛筆」展、「小島一郎 北へ、北から」展、「増山たづ子 すべて写真になる日まで」展、「戦争と平和──伝えたかった日本」展などを担当。監督作品に「カメラになった男ー写真家 中平卓馬」がある。第10回重森弘淹写真評論賞、第24回「写真の会」賞、日本写真協会賞学芸賞を受賞。単著に『富士幻景ー近代日本と富士の病』、共著に『時の宙づりー生・写真・死』『戦争と平和ー〈報道写真〉が伝えたかった日本』など。 東京藝術大学・東京工芸大学非常勤講師。
                                      
2月11日(祝・土)13:00-17:50
上映会
13:00-14:20 相馬クロニクル
制作:相馬高校放送局
上映時間:60分/2011〜2016年制作の作品群を上映します。
「緊急時避難準備不要区域より」(2011年6月制作)7分
「Girl’s Life in Soma」(2012年5月制作)  8分
「相馬高校から未来へ」(2013年6月制作)8分
「ちゃんと伝える」 (2014年5月制作)8分
「いつかきっと」  (2015年5月29日制作)8分
「MY BIRTH PLACE」(2016年5月制作)8分


*上映後トーク
ゲスト:渡部 義弘(元相馬高校放送局顧問)
渡部 義弘(わたのべ よしひろ)
産まれてからずっと福島県民。太陽の塔・福島第一原発一号機とは同級生。前相馬高校放送局顧問(相馬高校放送局震災後の実績:2013年JCJ特別賞を高校生として初めて受賞。第60回NHK杯全国高校放送コンテストテレビドキュメント部門最優秀賞)

14:30-16:30 「なみのこえ 新地町」
監督:酒井 耕、濱口 竜介
上映時間:103分/2013年制作
*上映後トーク
ゲスト:酒井 耕

16:40-17:50 「自然と兆候/4つの詩から」
監督:岩崎 孝正
上映時間:50分/2015年制作
*上映後トーク
ゲスト:岩崎 孝正
                                      
2月18日(土)14:00-16:00
てつがくカフェ
集まったみなさんとゆっくりお茶を飲みながら、作品を囲んでじっくり対話します。
ファシリテーター:辻 明典
ファシリテーショングラフィック:浅野 希梨

明典(つじ あきのり)
1987年福島県生まれ。「てつがくカフェ」という対話の場を、仙台や南相馬でひらいている。ときおり、エッセイも書いている。共著書に『哲学カフェのつくりかた』。特別支援学校の教員。

浅野 希梨(あさの きり)
1983年福島生まれ。KiNoKuMaYA主宰。2011年以後、福島でおこる表現にこだわり、表現者と参加者が交わる場づくりを軸に舞台等の企画プロデュースを行う。人々の生活スタイルに寄り添った文 化や領域横断的な地方型表現活動のあり方を模索してコーディネーターとしても活動している。
                                           
2月26日(日)16:30-18:00
座談会
本展参加者と「増山たづ子と東北の記録者たち」プロジェクトチームが集い、来場者のみなさんと本展を振り返ります。
                                         
アクセス













ギャラリー・オフグリッド
〒960-8042福島市荒町4-7 県庁南再エネビル2F、3F
(ギャラリー・オフグリッドFBページ)
                                      
主  催「増山たづ子と東北の記録者たち」プロジェクトチーム
特別協力IZU PHOTO MUSEUM、増山たづ子の遺志を継ぐ館
助  成公益財団法人 朝日新聞文化財団、東日本大震災 芸術・文化による復興支援ファンド「GBFund」
協  力|ギャラリー・オフグリッド、TURNAROUND、一般社団法人NOOK、一般社団法人サイレントヴォイス
チラシデザイン伊藤 裕
お問い合わせtazuko.tohoku@gmail.com